高山先生からのメッセージ - ベートーヴェン「ハープ」への取り組み

弦祭では、これまでチャイコフスキー、ドヴォルザーク、レスピーギといった、ロマン派の作品を多く取り上げて勉強してきました。
ロマン派では、演奏の表現が表に強く出るため、楽曲分析から演奏までの道筋に、研究すべきことや、特別なノウハウといったものがたくさん存在します。 それらを組み合わせて音楽を創ることは、とても難しいのですが、逆に、演奏へのヒントも大変多く楽譜に散りばめられています。 いわば、難しいが解りやすい、という作品群であったと思います。
そこで、ここまで向上してきた個々のセンスを、さらに楽しく磨いていける作品はないかと考え、それは、古典派の交響曲であるという考えに到達したわけです。すなわち、ロマン派に比べて、シンプルだがヒントは多くない、そして、骨格のしっかりした作品群です。
ところが、モーツァルトからベートーヴェンへの時代における弦楽合奏作品には、交響曲のようなレベルで書かれたものがほとんど見つからないのです。
そこで、ベートーヴェンの弦楽四重奏の傑作群に可能性を求めました。 多くのスコアを精査し、弦楽合奏として仕上げていくことが新しい創作になる作品という観点で選び出したのが、この「ハープ」です。 コントラバスパートを新しく書き足すことで、弦楽による古典派交響曲としての構成を図り、普段、ヴィルティオーゾがソリスティックに演奏することが多いカルテットを、逆にシンプルな音の構成として磨き直すことを狙って編曲いたしました。
ぜひ、一度弾いてみていただきたい作品です。 そして、運命、田園に次ぐ時代のベートーヴェン中期の傑作が、弦楽の交響曲のように表現される世界を楽しんでください。


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